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■『戦旗』1632号(3月20日)4-5面

 
G7広島サミット粉砕!
 大軍拡―大増税、原発推進の岸田政権を
 全人民的政治闘争の大高揚で打倒しよう
  
                    
                      
高橋宏幸




 昨年七月の安倍銃撃死事件は、自民党と反共犯罪集団=統一教会との歴史的な癒着構造を満天下に暴き出した。そして、人民の過半数が反対という民意を無視した安倍国葬の強行、さらには、「政治とカネ」や数々の放言などによって、自民党閣僚四名の「辞任ドミノ」が起こった。岸田政権の支持率は20%台へと下落し、不支持率が上回る状況がつづいている。岸田政権はこの危機を乗り切るために、ウクライナ侵略戦争を全面的に利用して、「台湾有事」煽動や、朝鮮民主主義人民共和国(以下、共和国)の「ミサイル開発」などを「軍事的脅威」として喧伝し、人民の危機感を煽り立てることで政権維持をもくろんでいる。
 戦争発動によって、より一層の困窮化を強制され、あるいは戦争動員によって殺し、殺されるのは政治家やブルジョアジーなど支配階級ではなく、いつでも圧倒的多数の被支配階級=労働者階級人民だ。今こそプロレタリア国際主義の旗をかかげ、戦争と一体のものとしてある排外主義煽動を打ち破り、労働者階級人民の国境を越えた連帯を強固に創り上げていかなくてはならない。この間の米帝をはじめとする帝国主義列強による対中国包囲網形成の動きは、東アジア地域での軍事緊張を飛躍的に高めている。このような中で、アジア人民の反帝国際連帯のより一層の推進は焦眉の課題としてある。
 米帝―バイデン政権の「インド太平洋戦略」と一体となり、対中国包囲網構築を進め、琉球弧の戦場化に突進する日帝―岸田政権を今こそ打倒しよう。


●1章 戦争と大増税に突き進む日帝―岸田政権を許すな!

所信表明演説冒頭の「防衛力の抜本的強化」


 首相岸田は、一月二三日に開会された第二一一国会において施政方針演説を行った。
 岸田は演説の冒頭で、現状況を「明治維新から敗戦」以来の「歴史の転換点」であるとの認識を示した。その理由として、まずロシアによるウクライナ侵略戦争をあげ、これを「法の支配による国際平和秩序」への挑戦であり、「国連安保理の機能不全を露呈」しており、「この機に乗じて、ロシアとの連携を強める国、エネルギーなどで実利を追う国、核ミサイル開発を進める主体など」により、「国際平和秩序の弱体化があらわになっている」と、明言は避けたものの(改定「安保三文書」では名指ししている)、中国や共和国を「脅威」として危機感を煽り立てたのだった。
 岸田はつづけて、「これまでの時代の常識を捨て去り、強い覚悟と時代を見通すビジョンをもって、新たな時代にふさわしい、社会、経済、国際秩序を作り上げていかなければなりません」と宣言し、「G7議長国として、強い責任感をもって、今年一年、世界を先導してまいります」と述べた。
 岸田は、そのための「先送りできない課題」として、「防衛力の抜本的強化」を演説の冒頭(=最重要課題)にあげた。岸田政権は、「防衛力の抜本的強化」を、これまでの「新しい資本主義」よりも前の課題に位置づけ、これの実行に注力する意思を鮮明にした。
 岸田は政権成立当初、「新たな資本主義」や「聞く力」などをかかげ、資本家と富裕層優遇の「アベノミクス」や、改憲と日米軍事一体化を強行してきた「安倍政治」との違いを前面に打ち出して登場したのだった。だが、その実態は、菅前政権と同様に「安倍政治」の忠実な継承者であることがいよいよ明白となったのだ。

「積極的外交」軍事外交路線推進を明言

 岸田は演説において、「まず、優先されるべきは積極的な外交の展開です。同時に、外交には裏付けになる防衛力が必要です。戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に対峙していく中で、(中略)十分な守りを再構築していくための防衛力の抜本的強化を具体化しました」と語った。ここで岸田がいう「積極的外交」とは、帝国主義列強との同盟関係による中国、ロシア、共和国の軍事的包囲―解体のための軍事外交路線の一層の推進である。
 より具体的には、クアッド(日米豪印戦略対話)やAUKUS(米英豪安全保障協力)、インド太平洋戦略枠組み(IPEF)など、インド太平洋地域における二国間、あるいは多国間の軍事協定(同盟)の締結による対中国軍事包囲網の形成と、軍事演習=戦争挑発の画段階的な強化だ。それらの軍事外交路線の強化は、中国、ロシア、共和国などの強烈な反発を招くことは必至であり、相互の軍事的緊張関係の一層のエスカレーションを結果する他ない。
 そもそも、「外交には裏付けになる防衛力(=軍事力)が必要」などという主張は、憲法九条でいう「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」を完全否定したものであることは明らかだ。

敵基地攻撃能力保有は「先制攻撃」戦略への大転換

 「防衛力の抜本的強化」の具体的内容は、①五年間で四三兆円の防衛予算の確保、②相手に攻撃を思いとどまらせるための反撃能力(=敵基地攻撃能力)の保有、③南西地域の防衛体制の抜本強化、④サイバー・宇宙など新領域への対応、⑤装備の維持や弾薬の充実、⑥海上保安庁と自衛隊の連携強化、⑦防衛産業の基盤強化や装備移転の支援、⑧研究開発成果の安全保障分野での積極的活用といったものだ。
 岸田はこの項の最後を、「今回の決断は、日本の安全保障政策の大転換ですが、憲法、国際法の範囲内で行うものであり、非核三原則や専守防衛の堅持、平和国家としての我が国の歩みを、いささかも変えるものではないということを改めて明確に申し上げたい」と締めくくっている。だが、これはまったくの詭弁という他ない。これまでの憲法解釈を一切反故にし、その理念や趣旨を完全に空文化する実質的な改憲そのものだ。
 この施政方針演説の内容は、昨年一二月一六日に閣議決定のみで改定を強行した「安保三文書」に基づいたものなのである。
 第一に、先制攻撃をめぐる歴代政権の国会答弁=憲法解釈と明らかに矛盾しているのだ。改定「安保三文書」の中において、政府が敵基地攻撃能力保有の根拠としているのは、一九五六年の政府見解であり、その論拠は、「ほかに手段がないと認められる限り、誘導弾などの基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ可能であるが、これまで政策判断として保有してこなかった」(が、情勢が変わったので保有することにした)、というものである。だがこれは、歴代政権が維持してきたこれまでの憲法解釈を完全に曲解したものだ。
 これまでの歴代政府の見解は、以下の趣旨であった。「急迫不正な侵略」が現実に起こった場合には、敵基地攻撃は「法理的には可能」であるが、「平生から他国を攻撃するような、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持っているということは、憲法の趣旨とすることではない」(一九五九年)というものだ。
 さらに、「たとえば誘導弾による攻撃を防御するのに他に全然方法がないと認められる限り、誘導弾などの基地をたたくことは法理的には自衛の範囲内に含まれており、可能」である。しかしながら、「仮定の事態を想定して、その危険があるからといって平生から他国を攻撃するような、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持っているということは、憲法の趣旨とするところではない」(一九五九年)というものだ。
 これらの国会答弁は「自衛権」についての見解をめぐるものであって、自衛隊の具体的な装備について議論されたものではない。だが、岸田政権は、これまでの憲法解釈を捻じ曲げ、これを強引に「敵基地攻撃能力保持」の根拠だと強弁している。このような手前勝手な憲法解釈の変更は、一四年に安倍政権が強行した「集団的自衛権行使」容認の閣議決定と同様の独裁的手法を踏襲するものであり、断じて認めることはできない。
 第二に、敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有は、すなわち先制攻撃戦略への転換そのものであるということだ。一四年安倍政権は、これまで歴代政権が否認してきた集団的自衛権の行使容認を閣議決定し、一五年に戦争法(「安全保障関連法」)を強行制定した。
 戦争法の施行により、「日本への武力攻撃が発生した場合」と、「存立危機事態が認定された場合」(=「武力行使の三要件」)には、日本は武力行使することが可能とされたのだ。
 「存立危機事態」とは、日本と「密接な関係にある他国」に対する武力攻撃が発生し、「日本の存立が脅かされる事態」だと定義されている。この場合の「他国」とは、第一義的には多数の在日米軍基地を有するアメリカを指すことは明らかだ。さらに言えば、米国という「国家」自体が攻撃を受けた場合に限らず、米軍の損耗なども「存立危機事態になる」との政府見解が示されている(二〇一七年)。したがって、米軍が攻撃され、損耗が発生していれば、たとえ日本が武力攻撃されていなくても、それは、「存立危機事態」ということになり、日本は米軍の交戦相手を攻撃することが可能になるということなのだ。これこそ「先制攻撃」以外の何物でもないではないか。
 政府による「存立危機事態」の認定によって、日本が先制攻撃をした場合には、攻撃を受けた相手国は必ず反撃をしてくる。その場合、真っ先に標的となるのは、在日米軍や自衛隊基地などの軍事施設だ。とりわけ琉球弧に続々と配備されているミサイル基地を狙った反撃が行われる可能性は極めて高く、これら地域に壊滅的な被害を与えることになることは明白だ。琉球弧の戦場化=「第二の沖縄戦」が現実の可能性として浮上しているのだ。

先制攻撃戦略の実態は琉球弧の出撃基地化だ

 岸田が演説でかかげた「南西地域の防衛体制の抜本強化」は、安保三文書の「防衛力整備計画」の中において、より具体的な形で示されている。地域名が具体的に明記されているのは「南西地域」だけであり、日帝は自衛隊の戦場を「南西地域」、すなわち琉球弧(九州南部から台湾北端)であるとはっきり定めたのだ。これは米中が軍事的に対峙する「第一列島線」とぴったり重なっており、日米合同軍による中国との戦争を想定したものであることは明らかだ。このことからも、防衛力整備計画は、「台湾海峡有事」を日本の「存立危機事態」としてとらえ、この地域における自衛隊戦力の部隊配備を目指して策定されたことは間違いない。
 防衛力整備計画では、①自衛隊全軍を指揮する統合司令部の創設、②スタンドオフ=敵基地攻撃兵器の配備、③沖縄に駐屯する第一五旅団の「師団」への改編、④島嶼部への部隊展開を迅速に行うための海上輸送部隊の新設、⑤司令部の地下化と構造強化、⑥長射程ミサイルを補完する弾薬庫の整備、などが明記されている。
 安保三文書は、米帝―バイデン政権が昨年一〇月に公表した「国家安全保障戦略」と露骨なまでに連動・符号したものだ。ここにおいてバイデン政権は、中国を「国際秩序を塗り替える意図を持ち、それを行う経済的、外交的、軍事的、技術的能力を増す唯一の競争相手」と明記し、「中国に打ち勝ち、ロシアを抑制する」ために、対中国包囲網の形成を最重要戦略と位置づけた。そしてインド太平洋を米帝の「死活的利害がかかった地域」とまで強調しているのだ。このような情勢認識に立ったうえで、米帝は、「民主主義と専制主義との戦い」、あるいは「自由で開かれたインド太平洋」構想の下で、没落する帝国主義的覇権の維持のために、なりふり構わず中国の政治的、軍事的包囲網形成を推し進めているのだ。
 日帝支配階級もまた、東アジアにおける帝国主義的覇権の維持が死活的であるがゆえに、米帝の「インド太平洋戦略」との政治的・軍事的な一体化を一層推し進めているのだ。

先制攻撃兵器の大量保有を宣言

 敵基地攻撃能力保有=先制攻撃戦略への転換を宣言した日帝―岸田政権は、今国会において、その実行のために大軍拡予算の編成を行った。二三年度の防衛予算案は、二二年度当初比26・3%増の六兆八二一九億円とした。これは九年連続での過去最大規模の更新だ。
 スタンドオフ防衛能力が強調され、ミサイルの射程を現在の百数十キロメートルから、中国本土にまで届く一〇〇〇キロメートルへと延ばす「一二式地対艦誘導弾」の量産化も盛り込まれた。さらに、大気圏内を超音速で滑空し攻撃する「高速滑空弾」や、極超音速ミサイルの開発、量産に着手することも明記された。また、中国艦船を念頭にした地対艦ミサイル部隊を沖縄島に配備する計画も明示した。
 敵のミサイル拠点をたたく敵基地攻撃能力保有のために、アメリカ製の巡航ミサイル「トマホーク」四〇〇発(二一一三億円)など長射程ミサイルの一括購入も明記された。
 トマホークの射程距離は一二五〇キロメートル以上であり、一九九一年の米帝によるイラク侵略戦争(中東湾岸戦争)において初めて使用された。その後も〇一年のアフガニスタン侵略戦争、〇三年イラク侵略戦争、一七年のシリア攻撃など、常に米軍の「対テロ」戦争=先制攻撃の際に、相手国の中枢を破壊し、相手からの反撃を封じる目的で多用されてきた。「精密誘導」といっているが、実際には誤爆も多く、軍事施設以外の住宅や病院などにも着弾し、多くの非戦闘員をも虐殺しつづけてきたのだ。
 トマホークを保有しているのは、今まで米帝、英帝だけであった。改定「安保三文書」の中で「仮想敵国」として明記された中国、共和国、ロシアの側から見れば、トマホークをはじめとするスタンドオフミサイルの大量配備は、日本が政治的軍事的中枢を攻撃する能力を保有したことを意味するのであり、東アジアにおける軍拡競争がエスカレートすることは明らかだ。

戦争のための大増税、戦時国債発行許すな

 このような、五年間で総額四三兆円にのぼる莫大な防衛費=大軍拡予算編成のために、労働者人民の福祉予算削減と、大増税が行われようとしている。
 岸田は、「二〇二七年度以降、裏付けとなる毎年四兆円の新たな安定財源が追加的に必要」だとして、この演説で明言を避けたものの、大増税方針を明らかにしている。その財源として、所得税や東日本大震災の「復興財源」の流用や、タバコ税、消費税増税などが検討されているのだ。さらに、自衛隊の設備費のために「建設国債」の発行までが狙われている。大軍拡と戦争のための大増税へと突き進む日帝―岸田政権を許すな。


●2章 経済安保戦略、労働法制改悪、原発回帰を宣言した岸田政権

経済安保戦略の本質は中国包囲網の形成

 政権成立当初まで、岸田は「アベノミクス」からの脱却と、「分配と成長」を「新しい資本主義」だと標榜してきた。だが、今回の施政方針演説で岸田は、「分配」の主張を完全に後景化させるとともに、「権威主義的国家からの挑戦に直面する中で、市場に任せるだけでなく、官と民が連携し、国家間の競争に勝ち抜くための、経済モデル」が「新しい資本主義」だと言い出した。さらに、「労働コストや生産コストの安さのみを求めるのでなく、重要物資や重要技術を守り、強靭なサプライチェーンを維持する経済モデルです」と、「経済安保戦略」への転換を主張した。
 一九年一二月から急拡大した新型コロナウイルス・パンデミックや米中の覇権をめぐる争闘の激化、二二年二月のロシアによるウクライナ軍事侵攻は、サプライチェーン(供給網)の世界的な寸断、停滞を引き起こした。これらを主な要因として、国境を越えた「自由な資本輸出」を特徴とする新自由主義グローバリゼーションの時代は終焉した。
 これに代わって、国家の利害を前面に押し出し、「分断と対立」を基本的特徴とする時代が始まっている。帝国主義諸国と中国、ロシアとの対立と競合激化の中で、帝国主義諸国は、コロナ禍や戦争などの「有事」に備え、自国内や同盟国内だけで完結するサプライチェーンの再構築を進めている。国家戦略と資本の利害とを一致させ、そこから資本の再生産活動を管理・統制する「経済安保戦略」への転換だ。具体的には、米中がその覇権をめぐって競合する半導体、量子、宇宙分野などの戦略的産業の開発、生産を国家の管理下に置くものとしてあり、本質的には経済領域での対中国包囲網形成を企図したものなのだ。

労働法制改悪を許すな

 岸田の施政方針演説では、「物価高対策」、「構造的な賃上げ」がうたわれているが、三〇年間上がらない賃金の根底的原因である最低賃金の引き上げについてはまったく語ることはなかった。岸田はそれを「リスキリング(学び直し)による能力向上支援や、日本型の職能給の確立、成長分野への円滑な労働移動を進めるという三位一体の労働市場改革」などと、労働者の「能力向上」の論議へとすり替えようとしているのだ。
 さらに、「人材の獲得競争が激化する中、従来の年功序列から、職務に応じたスキルが適正に評価され、賃上げに反映される日本型の職務給へ移行することは、企業の成長のために急務」とし「六月までに、日本企業に合った職能給の導入方法を類型化し、モデルをお示しします」として、時間給賃金体系の解体と、「専門業務型裁量労働制」の範囲拡大などを骨子とする労働法制の改悪を狙っているのだ。

原発回帰に全面転換した岸田政権

 岸田政権は、東日本大震災―福島第一原発事故による「原子力非常事態宣言」がいまだ解除されていないにもかかわらず、ウクライナ侵略戦争による燃料価格の高騰や、GX(グリーントランスフォーメーション)戦略をも最大限に利用して、原発再稼働、新世代原発の開発、原発新増設を強行する姿勢を鮮明にした。福島原発事故後、自民党政権が言ってきた「原発は暫時減らし、新増設はしない」との態度を一八〇度転換して、「原発回帰」を明確にしたのだ。
 演説において岸田は、「ウクライナ戦争によってエネルギー危機に見舞われた各国は、脱炭素と、エネルギー安定供給、経済成長の三つを同時に実現する『一石三鳥』のしたたかな戦略を動かし始めています」としつつ、「日本もこの三つの目的を実現するためにGXを推進」すると宣言した。
 そのうえで、「徹底した省エネ、水素・アンモニアの社会実装、再エネ・原子力など脱炭素技術の研究開発などを支援していきます」と述べ、さらに、「安全の確保と地域の理解を大前提として、廃炉となる原発の次世代革新炉への建て替えや、原発の運転期間の一定期間の延長を進める」と明言した。
 岸田政権は二月二八日、六〇年超えの老朽原発の運転延長を可能にするエネルギー関連の五つの法改悪案を閣議決定した。東京電力福島第一原発事故後に導入した「原則四〇年、最長六〇年」という運転期間の規定を、停止期間を計算から除外して、運転できる期間を延長するというのである。これらを束ね法案―「GX脱炭素電源法案」として、今通常国会に提出しようとしているのだ。
 福島第一原発事故は現在も「収束」していない。メルトダウンで溶け落ちた福島第一原発の核燃料デブリは、いまだに回収の見込みは全く立っていない。故郷に帰ることができない避難民は現在でも二万人以上にのぼる。避難区域の解除が進んでいるが、その実態は、被曝線量の限界である一ミリシーベルトを二〇ミリシーベルトにまでひき上げてのことであり、帰還者に放射線被曝を強制するまったく欺瞞的な「解決策」だ。福島で小児甲状腺ガンを発症する子供は増え続けており、すでに三〇〇人を超えている。
 政府と東電は、福島県漁連に対して、「関係者の理解なしに海洋放出はしない」との約束を反故にして、今春から夏にも一三〇万トンもの放射能汚染水の海洋放出を強行しようとしている。核種除去機「ALPS」を使っても、多くの核種放射能は取り切れずに残る。政府はこれを再度「ALPS」を使い除去するとしているが、放射性物質を100%除去することはできない。基準値以下になるように海水で薄めて放出するとしているが、放射能自体の量が減るわけではないのであり、まったく意味をなさない。また、トリチウムを「無害」だと強弁して、除去することなく海洋放出しようとしているが、トリチウムは細胞核に入り込むと、遺伝子等に被害をもたらすことが科学的にも実証されている。海洋放出する汚染水がなくなるのは今後三〇年以上もかかるといわれており、その間、世界の海を放射能で汚し続けていくことになる。溶け落ちたデブリを取り出さない限り、「汚染水」が無くなることはないのだ。
 原発回帰を宣言した日帝―岸田政権の暴挙を徹底弾劾し、老朽原発再稼働、原発新増設、放射能汚染水の海洋放出強行を絶対に許すな。


●3章 G7広島サミット粉砕 岸田政権打倒

広島での戦争会議開催を許すな

 岸田は一月九日から一四日にかけてG7諸国のフランス、イタリア、イギリス、カナダ、アメリカを訪問した。岸田は訪問先各国で、日本の新「国家安全保障戦略」を説明して回った。最後の訪問地アメリカにおいて、バイデンとの日米首脳会談後に共同声明を発表した。そこで、「インド太平洋は中国、北朝鮮による増大する挑戦に直面している。欧州では、ロシアがウクライナに対して不当かつ残虐な侵略戦争を継続している」との共通認識で一致したのだ。
 米帝―バイデンは、岸田政権による「安保三文書」改定強行、軍事費倍増といった日帝の軍事政策の大転換を「日米関係を現代化するものだ」として支持しつつ、「日米同盟がインド太平洋の平和、安全及び繁栄の礎であり続けると改めて確認」し、「核を含むあらゆる能力を用いた、日米安保条約第五条の下での、日本の防衛に対する米国の揺るぎないコミットメント(関与)」を改めて表明したのだ。
 五月G7広島サミットは、帝国主義諸が対中国包囲網の形成と、対ロシア、ウクライナ支援での結束を確認する場となることは明らかだ。さらに、岸田は、「被爆地広島で開かれるサミットの機会を捉え、『核兵器のない世界』に向け、国際的な取り組みを主導します」などと主張している。だが、広島に原爆を投下したアメリカは、これまで一度も被爆者に謝罪をしたことなどないし、原爆投下による人民大量虐殺を戦争犯罪と認めたことはないのだ。G7サミットに出席するアメリカ、イギリス、フランスは核保有国である。そもそも日帝自体が米帝の核兵器を前提とした日米安保軍事同盟を基軸とするがゆえに、核兵器禁止条約に参加していないのだ。このこと一つとってみても、岸田の「核兵器のない世界」の欺瞞性は明らかだ。

排外主義と対決しプロレタリア国際主義で闘おう

 コロナ禍やウクライナ戦争による資源価格の高騰によって、歴史的な物価高が続き、日本の労働者人民の困窮化が進んでいる。そのような中での、「安保三文書」改定の強行、日帝の軍事政策の大転換と戦時大増税の攻撃は、労働者人民の困窮化にさらに拍車をかけることは必至だ。この暴挙に労働者階級人民の怒りが沸き上がっている。
 議会主義既成野党は、岸田政権による中国、共和国の「軍事的脅威」論に完全に取り込まれ、これらの排外主義的煽動や軍事外交路線を自明の前提としているがゆえに、戦争国家化に反対する闘いを組織しようとはせず、祖国防衛主義への道を突き進んでいるのだ。
 だからこそ、岸田政権が低支持率の中にあっても、まったく対抗軸とはなりえていない。とりわけ、労働貴族=連合の自民党へのより一層の接近にひきずられ、立憲民主党の右傾化=一層の体制内化が顕著に表れている。岸田政権が、中国脅威の戦争煽動を強める中で、日本共産党までもが自衛隊の「活用」、自衛隊の条件付きの「合憲」を強めている。
 このような中で、われわれプロレタリア国際主義派は、日帝―岸田政権、それと一体となったブルジョアマスコミによる中国、共和国の「軍事的脅威」煽動の虚構性を全人民に暴露し、戦争と大軍拡、大増税に反対する全人民的政治闘争の高揚を創り出し、日本労働者階級人民を排外主義と侵略反革命戦争の沼地へと引きずり込もうとする岸田政権を打倒していかなくてはならない。
 戦争と原発再稼働、大増税へと突き進む日帝―岸田政権を全人民的政治闘争の大高揚で打倒しよう。


 


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